朱夏 

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望月

「夜に、わらう」の平助ver





望月


ごろりと畳みの上に転がって、ぼんやりと月を見ていた。
満月。
嫌みなくらい迷い無く光る球体に、少し気後れして。
風を入れ込もうと開けていた障子戸を閉める。

月は自ら光る事無く、太陽の光を反射させているのだと言う。
昼、動く彼らが太陽ならば。
夜、動く俺は…彼らあっての月なのかも知れない。
ただ生きているよりも。
誰かの為に生かされていると思った方が、気持ちが楽になる。

選択肢は幾つもある、というけれど。
結局は、肯定と否定しか無い。
迷う余地もない。たった二つだ。どちらかを選べばいい…。

ここを離れるか、否か。大きな選択をしようとしていたとき。
自分が選んだ思想の正当性よりも、いつか慣れ親しんだ仲間と対峙し、斬り合うかも知れないという恐怖に惑わされていた。
自分が斬られるのは仕方ない。
彼らの事だ。決して死に損なって要らぬ痛みを伴うような、半端な切り方はしない。自分でも気付かないうちに、あの世に送ってくれるだろう。
でも、俺にそれが出来るだろうか…。
その場面を、幾度思い描いてみても。俺は彼らに刃を向ける事すら出来ずに震えていた。
情けない。
その程度の決意なのかと嗤いながら…それでも。

それでも。
懸命に、懸命に考えて。迷って、考えて。
今はこれが一番正しい選択と導き出した答えだったのだ。
それを悔いるということは、あの時の自身を否定する事に他ならない。
絶対にあってはならないと覚悟した筈なのに。
ー 揺らいだ。
だから、バチが当たったのかもしれない。

まさか生死を分つ刹那に。
「人として死ぬ」か、「死人として生き残るか」なんて、相反した選択肢を与えられるなんて思わなかった。
ただ、死ぬのが怖い。その一心で紅い薬に手を伸ばしたけれど…。

間違えた…

薬で、生きる事を許された時間は、
ただ。後悔もって、あの時の自分に許しを乞う時間なのか。

狭い部屋の中。じわりとにじり寄る様に広がり出した陰鬱な空気に追い詰められる。
刺々しい後悔に胸を塞がれ、上手に息を吐く事が出来なくなった。
思わず障子戸に手をかけ、思考を断ち切る勢いで開け放った。

空に在るのは満ちた月。
これから毎日少しずつ細って、やがて暗闇に飲込まれて行くだろう姿に己を重ねて。
それでも最後の最後まで、自分で在りたいと願った…。



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