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朱夏 

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ふたつのてのひら (斎千)

夏の終わりに…花火の話を…





ふたつのてのひら


何処か、違和感を感じるのは。
隣で揺れるポニーテールが、いつもより少し高い位置に見えるから。
ローファーのヒールと、下駄の歯の高さの違いなんて数センチだけなのに、急に千鶴の背が伸びた様に思える。

花火大会へ向かう人混みの中。
はぐれない様にと差し出した俺の手に、千鶴は小さく自分の手を重ねた。
「駄目だ。それでははぐれてしまう」
ぎゅっと力を込めて握ると小さな悲鳴が聴こえて、咄嗟に手を離す。
無様な…俺は何やってるんだろう。
「済まない。力を入れ過ぎたか?」
慌てて、もう一度。
今度は力加減に気をつけて繋ぎ直した。
「大丈夫です。ちょっと…びっくりしただけ」
千鶴は笑って応えてくれたけれど…自分の余裕の無さに少しへこむ。
せめて履き慣れない下駄で躓いたりしないよう、慎重に歩幅を選んで歩く。

待ち合わせして、夕刻、一緒に下校する事はあっても。
夜。
二人だけで出かけるのは初めての事。
それだけでも緊張するのに…。
何度か私服姿は見ているが、初めての浴衣姿に驚いて…心が踊るようだ。

繋いだ手を離したら、直ぐはぐれてしまいそうで。
存在を確かめる様に、何度も握り直す。
その度にふっと顔を上げ、千鶴は自分を見る。
その視線がこそばゆくて、自然と頬が緩みそうになるのを慌てて引き締めた。
頼りない顔など、今夜は絶対見せたくない。

見上げる空一面に、鮮やかな光の花が開く度に。大きな歓声が上がる。
「綺麗…」
雑踏の中でも、千鶴の声だけはちゃんと聴こえた。
散ってしまった後も、名残をもとめるように。
千鶴はずっと空から眼を離さない。
隣に俺がいることも忘れてしまったのではないかと、不安になって。
繋いでいた手をゆっくりと離すと、肩に腕を廻した。
掌が触れた瞬間、びくりと千鶴の身体が強張るのを感じたが、咎める言葉は無かったから、そのままそっと引き寄せた。
熱と一緒にほわりと寄りかかってきた、半身分の重みが愛おしい。

花火の終了とともに、一斉に駅に向かう観客に揉まれるように歩く。
押されて、繋いだ手が離れかけた時。
千鶴はすがるように必死で指を絡ませてくる。
離れまいとする、その気持ちが嬉しくて。
今度は俺の方から、しっかりと手を繋ぎ直した。



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