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朱夏 

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揺籃

noritsuma様へ贈らせて頂きます。

頂いたお題は「山笑う」





揺籃



眠って、起きて。
また眠る。
それを幾度も重ねるうちに、やがて季節が動く。
春は、夏は。
秋も、冬も必ず訪れる。
それが当たり前だと思っていた。

忙しなく追われた春の作付けも落ち着いた頃。
「久しぶりに出かけませんか」と千鶴から誘われ、ようやく雪から開放された里山への道を歩いている。
さほど険しくもなく慣れた道であっても、勾配がつけば自ずとゆっくりとした足取りになる。
転ばぬよう、足を降ろす場所にも注意を払っている様にも見えた。
半歩、更に一歩分程千鶴が遅れれば、それに歩幅を合わながら、昼下がりの穏やかな時間を過ごしている。

はぁ、と。少し上がった呼吸から溜め息が漏れた。
目指した場所は、昨年の春に偶然見つけた山桜が開く場所。
「春の、色ですね」
しゃんと背筋を正して佇む。
その視線の先で、淡紅色の清楚な花が広がり揺れた。

「…子供が、居ます」

告白は、取り留めも無い話の様になされ。
「子供…が?」
ー えぇ、今、ここに。
余りのあっけなさに、事態を飲込めずにいる俺の手を取り、自身の手と重ねてほわりと腹に添えた。
「貴方と私…そして子供と。初めてのお花見です」
まだ聞こえる筈のない心音を、彼女の体内から感じた気がした。

揺らぐ緑、満ちる緑の中で
笑う。

この春は、当たり前の春ではなく。
ただ一つの、春なのだと知った。






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プロフィール


みゃう

Author:みゃう
誕生日。総司の命日
原田左之助溺愛中

足し算よりも引き算の文字書き
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