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朱夏 

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【ガーターリングトス騒動記 番外編 / 藤堂平助の場合】

ロカ様から頂きました。


ガーターリングトス騒動記 番外編
 
✾藤堂平助の場合✾
 



「うん、左乃助さんがこのドレスをつくってくれたの……」
 
 恥ずかしそうにしていながら、それでも嬉しそうに千鶴は平助に微笑みかけた。
 
 披露宴の会場から、2次会の場所へと一足先に移動してあの大騒動の元になったドレスへと着替えていた千鶴とそれに合わせたロングコートに着替えた左乃助が入り口で皆を出迎える。
 
「へぇ、左乃さんがねぇ!」
 
 意味ありげな視線で左乃助を見てそう軽口を叩くと、
 
「うるせぇよ!」
 
 かるく拳が平助の頭を掠めた。それを軽い身のこなしでかわす。そうして、平助は改めた千鶴に向って笑ってこう言った。
 
「けどさ、左乃さんはさっすがだよな。これ、写真で見るよりも千鶴にすっげぇ似合ってんじゃん」
 
 幸福そうな二人の姿を見て、平助の胸の奥に痛むものも確かにあるのだけれど……。
 
それでも今日は笑っていよう。千鶴の笑顔が曇らないように、だって、この子は平助にとっても特別で大切な子なのだ。
 
ここから千鶴と左乃助の二人の新しい日々が始まる。それを笑って祝わなくては、男がすたる。
 

 
 披露宴に出ていた人間がそのまま2次会に流れてきたのだろう。出席している顔ぶれにあまり変わりはない。それでもいくらか女の子の人数が増えているのは千鶴の友達だろう。
 
 みんなきれいに化粧して、平助と年が変わらないなんて信じられない。
 
―そういえば、鈴鹿は道場に来る時に化粧とかしてたけど……。千鶴が化粧してるのなんて、あんときが初めてだったよなぁ。
 
 薫と総司の二人に振り回されたあの大騒ぎを思いだして、なんだか平助はおかしくなった。
 
「あー、無事に終わりそうでよかったぁ~」
 
 思わず口から出た言葉に、傍で下戸のくせしてワイングラスを傾けていた土方が、
 
「平助、お前……。ほん―――っとに、無事に終わるって信じてるのか?」
 
 眉間の皺も深く真剣な表情で言葉を返した。
 
「へ!」
 
 なんで!? と首を傾げる。
 
「新八が披露宴で潰れちまっただろうが。2次会の司会はあの鈴鹿と不知火だぞ!」
 
 あの二人に関して、鈴鹿グループの次期総裁で超が付くほどのお嬢様だということ、その下で働いている不良弁護士という認識しか平助にはない。
 
 まぁ、2次会の司会を頼まれていて酔い潰れてしまう新八にも困りものだけれど。
 
「でもよ、土方さん。これ以上なんかあると、困るって言うか……」
 
 さすがに結婚式の当日だけに薫は親族席で大人しくしているし、披露宴が終わって仲人役を終えた近藤達に総司はしっかりマークされている。なにか騒動が起こりようはないはずだけれど……。
 
「いや、俺もまさかとは思うんだが、あの二人が仕組んで、ガーターリングトスさせるとねぇだろうな……」
 
 ぼそりと呟いた土方の言葉に、ひぇええ、と言葉にならない叫びを平助は上げていた。
 
 その時、
 
「あの、写真を撮ってもらってもいいですか?」
 
 千鶴の友達なのだろう、きれいなドレスに身を包んだ女の子の集団が平助に声を掛けてきた。
 
「えと、いいけど……」
 
 デジカメを渡す手の爪にはきれいなネイルアートがされている。そのきれいな手に女の子なんだなと、平助は思う。
 
「千鶴と一緒に撮りたいんなら、俺、呼んでくるけど」
 
「ほんと!」
 
「良かった……。大人の男の人が多いから頼めなくて、どうしようかと思ってたの」
 
 きれいに化粧して、大人びたドレスに身を包んでいても根っこの部分は千鶴と同じなんだと思うと少し気が楽になった。何しろ、周りは男ばかりでこんな風に同じ年頃の女の子と話すのなんて千鶴と千姫ぐらいだったから。
 
「まってな!」
 
 物おじせずにぱたぱたと千鶴の元へと走っていく平助の姿に、小鳥が囀るように楽しそうに囁き合って少女たちは笑いさんざめく。
 
「もててるじゃねぇかよ、平助」
 
 そう一人ごちると土方は柔らかく微笑んだ。
 

 
 それがきっかけで平助は千鶴の同級生たちと同年代ということもあって、平助は自分の学校の事や試衛館での事を彼女たちにせがまれるまま話して聞かせていた。
 
「すっごい! 藤堂君って剣道をやってるんだ、武士道ってやつ? かっこいい!!」
 
 意外なところでほめ言葉が出て驚いた。
 
 なんだか自分が別世界に放りこまれたような気がする。この中で情報収集する手段を持っている総司は偉大だ。そんな事を平助は思った。
 
 そんな平助に少し大人しそうな千鶴に似た感じの女の子が小さな声で尋ねてきた。
 
「藤堂君。千ちゃんにちぃちゃんがガータートスするって聞いたんだけど、本当?」
 
 その一言にぎょっとした。思わず、眼が泳ぐ……。
 
「え、と……。俺も、知らないんだけど……」
 
 あー、もう最後までこの件で引っ張るのかよ! とわからない誰かを恨みたい気持ちになった。
 
「ちぃちゃん、せっかく好きな人にプレゼントされたドレスなのに、身に付けた物を他の人に渡すの、嫌じゃないかな……」
 
 その子が誰に言うでもなく呟く。
 
 その一言に、あ……、と思った。
 
―そうだよな。あれって千鶴には左乃さんからの大事なプレゼントなんだよな。
 
 だとしたら、身に付けたもの全部を大切に取っておきたいはずだ。
 
あの大騒動は勘弁だったけど、千鶴はあのドレスを着て左乃助の傍にいたいと思ったのだろう。だから、左乃助は薫や総司が騒ぎを起こすのをわかっていてもあのドレスを仕立てたのだろう。
 
千鶴の為だけに仕立てたドレス。大事な、大事な二人の想いが込めれらもの。
 
そう考えると、平助にはあのドレス一着に込められた二人の気持ちがとても大切なものに思えてくる。
 
「うーん。ブートニア・トスでもいいと思うんだよねぇ、あたしは」
 
 別の子が聞いたことのない言葉を発した。
 
「ブートニア・トスって何?」
 
「ごめんね。男の子にはわからないよね。あのね、花婿さんの胸元にお花が飾ってあるでしょう。あれを独身の男の人へ投げるの。ガータートスと同じでそれを受け取った人は次の花婿になれるんだって」
 
 なんとも、結婚式にはいろんな仕来たりがあるものだ。平助は感心した。
 
ブートニア・トスか……。けど、それでもいいじゃないかと思った。だって、それは幸福のお裾分けなんだから。それが花婿の胸元を飾る花だって充分だ。
 
 だが、平助が思うように事は運ばなかった。
 

 

 

 
 それまで別な場所で楽しそうに話していた千鶴がパタパタと慌てて、左乃助の所へ戻っていく。それに合わせて千姫がマイクを手に取った。そう云えば、そろそろ2次会のお開きの時間だ。
 
 これで無事に終わると、胸を撫で下ろしたのは間違いだった!!
 
「あー、皆さま。宴もたけなわでなごり惜しいところなのですが、そろそろ式を挙げたばかりの原田さんと千鶴ちゃんは二人きりになりたいと思っている頃ではないかと思います」
 
 遠目にも千鶴と左乃助が困惑した表情を見せているのがわかる。
 
「結婚式では色々な仕来たりがあります。例えばサムシングフォー。そして、不祥、この私が受け取りました花嫁のブーケ。俗にいうブーケトス。と、いうわけで次の花嫁は私なのでよろしくねぇ」
 
 にこやかに宣言する千姫に藤堂の周りにいる友人たちが、苦笑いを浮かべていた。学校でもこんな調子なんだろう。そんな事を他人事のように思っていた時に、思いがけないところから思いがけない言葉が響いた……。
 
「でもぉ、こうした幸運を女性だけが受けると云うのは不公平。そこで独身男性にはガーターリングトスという習わしがありまーす」
 
 平助は頭を抱えたくなった。本当の首謀者は千姫だったのか!! そこへまるで号令をかけるように、不知火が言葉を続けた。
 
「てぇわけでぇ、独身男性は全員前に出やがれ!」
 
 その言葉を合図に嬉々として独身と思しき男性陣が前に出ていく。
 
「藤堂君はいかないの?」
 
「あたしたちはいいから、いっておいでよ!!」
 
 周囲からそう声を掛けられる。薫と総司の二人は既に千鶴の物を他人に渡すまじと前の方に出ていっている。
 
 もし、さっき彼女たちから聞いたことを千鶴がほんの少しでも思っているのなら、うん、と平助は頷いた。
 
「俺、行くな!」
 
 千鶴の友達に背中を押されるように平助は前に出た。必ず、キャッチしてやる!
 

 
 千鶴の手から放たれたガーターはふわふわと独身男性の間を舞っていた。
 
 それに向って、悪いとは思ったのだが、平助は隣にいた背の高い雪村家の親族の男性の肩に手を置いて勢いをつける! そうして平助は自慢の脚力でジャンプしてガーターを見事に手に入れた!!
 
「おっとー、見事ガーターを手にしたのは新郎の弟分だ! おーい、藤堂。次の花婿がお前ならここに居る連中、あと2年は結婚が出来ねぇぞ!」
 
 不知火が面白そうに藤堂がまだ16才だと暗に示す。
 
「いーんだよ! 俺が左乃さんの次に男前なんだから、あったりまえじゃん!!」
 
 へへっと不知火に向って親指を立てて見せて笑って見せた。
 
 そのまま、平助は左乃助と千鶴の元へ走った。行儀が悪いとも思ったが、薫や総司に捕まる前に二人の所に行かなくちゃ、意味がない!
 
「平助君が取ってくれたんだ」
 
 ほんのりと朱色が挿した千鶴の笑顔がすっごくきれいだなぁ、と思う。でも、この顔を見せてくれるのは左乃助が一緒だからだ。こうした顔を自分が千鶴にさせることができたんなら、もっと嬉しかったんだけど……。でも、これが正解なんだと思う。
 
 だって、二人ともどっちも欠けちゃいけない。二人揃ってこうしているのがあるべき姿だと平助は思うから。
 
 だから、大丈夫だ。ちゃんと二人を笑って祝福出来る。
 
「あのさ、左乃さん。おれ、頼みがあるんだけど」
 
「なんだぁ、いきなり。 いま、千鶴のガーターを受け取ったのに、まだなんかあるのか?」
 
 微かに苦笑して左乃助が問う。
 
「うん!」
 
 満面の笑みを浮かべて藤堂は頷いた。
 
「いま、俺が受け取ったガーターと左乃さんが胸につけてる花と交換してくんない?」
 
「え……」
 
「おい……」
 
 明らかに戸惑った表情を二人は浮かべていた。
 
「花婿がつけた花を投げるのをブートニア・トスというんだってな。千鶴の友達から教えてもらった。ガーターを投げるのも、花婿の胸元にある花を投げるのも、同じ意味があるって教えてもらった」
 
「平助君……」
 
 口ごもる千鶴に平助はゲットしたガーターリングを手渡した。
 
「これは千鶴が左乃さんにつくってもらった大事なドレスの一部じゃん。千鶴が持ってる方が絶対にいいよ。それに俺は左乃さんのつけてる花が欲しいんだ」
 
 ―平助の奴、男気を見せやがって!
 
 弟分の大人びた一面に左乃助は参ったと云う表情を浮かべた。いつの間にこんなにでかくなりやがったんだか!
 
「おう! これでよけりゃ、もってけ、平助!!」
 
 その胸に飾られた白いライラックの花だ。千鶴が今持っているブーケにあわせたもの。それを左乃助が自分の手で外そうした時、千鶴がそっと背伸びして左乃助の胸からブートニアを外した。それから、自分の持っているブーケからも同じ白いライラックと共にブーケを飾っている白いスイートピーを一輪外してブートニアに足す。
 
そして千鶴の手でブートニアを平助の背広に飾ってくれた。
 
「ありがとよ、左乃さん、千鶴!」
 
 飾られたブートニアに照れくさそうに笑ってみせると、千鶴と左乃助に改めた頭を下げた。
 
「お二人とも本日は本当におめでとうございます。千鶴、左乃さんはおれの兄ちゃんみたいなもんだから、よろしく頼むな!!」
 
 100点満点だ、と平助は胸を張って云えた。
 

 
「男気を見せやがって、平助の奴」
 
 苦笑交じりに呟いたのは土方だった。率先して、ガーターを取りに行った時にはどうしたんだと思ったが。これが理由だったとは……。
 
「これは見事過ぎてなにも言えませんねぇ」
 
 山南も同じ気持ちなのだろう。近藤も大任を終えて、こうして心配だった件も無事に終わって満足げだ。
 
 晴天快晴。外では幸福な風が吹いているに違いない。まさに祝福された一日だ。
 
 土方、そして試衛館の皆は思う。
 
 こいつは最高の結婚式だったじゃないか、と。
 
                           おしまい   








ロカ様の書かれた「ガーターリングトス騒動記」。
原田家の嫁取りでの余興に、ガーターリングトスとは何とまぁ…艶やかな事vvv
「俺が左之さんの次に男前なんだから」…ライバルに塩を送る,この余裕は何!。
格好良過ぎて、もだもだ。ジタバタ…山南さんが自分の気持ちを代弁してくれてます。
ロカ様、幸せ一杯のお話をありがとうございました。癒されました…v



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