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朱夏 

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【みずたま模様】のアコ様から頂きました。



わたしとあなたと、そしてきみと



姿の見えない左之助さんを探して、家から続く小道を歩く。
海へと続く道を歩きながら、風の冷たさに小さく一度身体が震えた。
手に持った羽織を握りながら、寒い思いをしているのではないか、と思う。
早く行ってあげたいけれど、大きなお腹が邪魔して走ることは難しい。
それでも、できる限りのはやさで足を動かす。
なんとなく、予感があった。
左之助さんは、きっとあの場所で水平線の向こうを眺めている。
そんな気がして海岸に足を運ぶと、やはり———砂浜に背の高い後姿を見つけた。

「左之助さん」

後ろから近づき、名を呼びながら、目線よりも上にある肩に羽織をかけた。
日本よりも随分と寒いこの土地は、秋がたいそう短い。
あまり暑くない夏が終わるとあっという間に冬がやってくる。
今の時期は、日本で言えば秋にあたるのだろうけれど、海岸を吹く風はもう十分に冷たい。

「暖かくしないと、風邪をひきますよ」
「ああ・・・千鶴」

まだ水平線の向こうを見ているような、焦点の合わない目で左之助さんは苦く笑った。

「すまねえ・・・手間かけさせたな」

わたしの大きなお腹をそっと撫ぜてそう言った顔を見て、左之助さんの考えていたことがなんとなく分かってしまった。
いやむしろここに来る前から———分かっていた。

「体調は、どうだ?」

両手を包み込むように帯の上に置いて、左之助さんは少しかすれた声でそう問うた。
まるで弱ったひよこでも抱くかのような、そんな様子で。

「大丈夫です。なんの心配もありません」

大きな手の上に自分の手を重ねて、わたしは笑った。
困ったようにきゅっと下がる眉が、なんだかとてもおかしくて。

「笑うこたぁねえだろ。心配ないなんて言われたって・・・俺は心配なんだ」

ついと視線を外して、拗ねたように口を尖らせる横顔が可愛らしくて、わたしは益々笑ってしまう。

「そんなに笑ってくれるなよ、まったく。
俺は、昔っからお前にはかっこわりいとこばかり見せてるような気がするな」

左之助さんは、はあと息を吐きながら、「お前のほうが、よっぽど不安だろうに、情けねえ」そう小さく呟いた。

「確かに・・・不安じゃないと言えば嘘になるかもしれません」

重ねた手をぎゅっと握って、わたしは正直にそう告げた。
お腹の子供が、無事健康に生まれてくるのか。
お産で、私自身が命を落とすことになりはしないか。
頼る人のいない異国の地で、無事にお産を終えることができるのか。
そんな不安を、今さら具体的に言葉にするつもりはなかった。
左之助さんは大きく目を見開いたまま、こちらをじっと見つめている。

「左之助さん」

切れ長の、澄んだ瞳を見上げて、わたしは宣誓する。
かつての左之助さんの槍のように、強く鋭くまっすぐに。
お腹が大きくなるにつれて、一緒に大きくなっていく左之助さんの不安をこの一撃でなぎ払ってみせる。

「わたし、元気な赤ちゃんを産みます」
「千鶴」
「どうしてそんなこと言い切れるんだと思うかもしれません。
でも、わたしにはわかるんです。絶対に大丈夫って」

くそ。本当に小さく息だけでそう囁いて、左之助さんの腕が、わたしを一気に捉えた。
頬がぎゅっと胸に着地して、左之助さんの匂いがわたしを包む。
強い力だったのは最初の一瞬だけで、すぐに腕の力が緩み、長い腕がわたしの背を優しく撫ぜた。

「千鶴、お前・・・あったけえな」

耳元に、掠れた声が響く。
ぴたりと寄り添ったわたしたちの間に、冷えた風は通りはしない。
身体の外も内も、満たされていて暖かい。
まだ微かに冷えたままの両手をわたしの頬に添えて、左之助さんはくしゃりと微笑む。

「昔は、全然平気だったんだがな。もう知らなかった頃には戻れねえ」

額に、乾いた唇が舞い降りた。

「千鶴、来てくれてありがとう」

触れたままの熱が、わたしの額に言葉を刻み込む。
それはきっと、今日だけのことではなく。

「寒かったんだ。もうどこにも行くな。
頼む。ずっと傍にいて、あっためててくれよ」
「はい」

これまでと、今このときと、そしてこれからと。
ずっとあなたの傍にいます、決して離れません。
そんな思いを込めて、わたしはおなかの子の分も、目の前の大きな胸板をぎゅうと強く抱きしめた。











「みずたま模様」水玉アコさんから頂いたSSです。
リンク記念に頂いたSSでしたが、我が侭をお願いして、
合同誌「今夜は寄せ鍋にしてみました」にも掲載させて頂いております。

この左之さんが可愛くて…可愛くてv。
強気まっしぐらな人が、ふと見せる弱気って本当に愛おしい…。
アコさんも言ってらしたけれど「ギャップってズルいよね…」ホント焦れます。


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Author:みゃう
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