朱夏 

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傍にいるということ

淡月の藍羅様から頂きました。






傍にいるということ



うちの嫁さんが、風邪を引いた。
今思えば、確かに朝出掛けに見た千鶴はちょっとぽやっとすっきりしない表情だった。
この春休みにやっと念願かなって正式に夫婦になって、そのまま新学期に突入して忙しい日々を送っていた。遅い残業になることも多くなる。千鶴も2回生になって忙しかったはずだろうが、きちんと家のことをしてくれて弁当まで持たせてくれる。それでも出来る限り俺も手伝っていたつもりだったし、千鶴を気遣っていたつもりだったんだ。
でも、結局つもり、でしかなかったようだ。


「ただいま……。千鶴?いねぇのか?」
すこし遅くなってから帰宅して鍵を開けてみると玄関が暗い。おかしい。
千鶴は大学生だ。どうしたってサークルやら友達やらとの付き合いで遅くなることもある。バイトだってしている。結婚したことでそういった付き合いを断ってしまわないように、千鶴には学生としての付き合いは大事にしろと言い聞かせている。学年末の3月と新学期の4・5月はどうしたって付き合いが増える。だから千鶴が俺より遅い日だってある。だが、必ず連絡をくれるはず。今日の朝はそんなことを言っていなかったし、メールも来ていなかった。
だから玄関を開ければ、明るい部屋に千鶴が待っていてくれるはず。そう思って開けた玄関。つぶやいた言葉に返事はない。もしかして、うたた寝でもしてるのか?
手探りで明かりをつけながら部屋に入る。リビングに千鶴の姿はない。
急に予定でも入ったんだろう。連絡する暇がない時だってある。ここのところお互い忙しくしていたから、今日はゆっくり夕飯を食えると思っていたがしょうがないだろう。とりあえず着替えるかと寝室の扉を開けて、明かりをつけて。吃驚した。

いないと思っていたはずの千鶴がベッドで寝ている。

「ち、千鶴?」
疲れが溜まっていて先に休んだ……って時間ではない。いったい何があったと慌ててベッドサイドに走る。真っ赤な顔をして苦しげに眉を寄せて眠る千鶴。頬や額に手を当てれば、めちゃくちゃ熱い。風邪か?こういうときは、どうしたら……。とりあえず、濡れタオル……いや冷却シートか?完全にパニックだ。
「……んっ。……あ、れ?さのすけ、さん?」
俺の声で目が覚めたのか、千鶴がうっすらと目を開く。熱で潤んでぼんやりとした瞳が俺を見つけて、掠れた声が俺を呼ぶ。パニックになった頭を深呼吸でひとまず落ち着ける。
「千鶴?大丈夫か?」
「あ、ごめんなさい。ちょっとだるいかなって思って寝ちゃってました。……もうそんな時間でした?お夕飯、しますね?」
こんなに熱があるんだ。苦しいはずなのに千鶴は俺に大丈夫だと微笑むと起き上がろうとする。いやいや、ちょっと待て。そんな状態で俺の飯の心配するなんて。頼むから自分を大事にしてくれと心の中で叫ぶ。
「起きるな!千鶴、お前熱あるぞ。いいから寝てろ。」
「でも……。」
「駄目だ。寝てろ。……今冷却シート持ってくるから。な、頼む。寝ててくれ。」
肩を掴んで布団の中に押し込み、すこし抗っていた千鶴の力が抜けるのを確認して返事を待たずにリビングに向かう。

それからばたばたと千鶴の看病をして。
すこし腹に物を入れて薬を飲んだ千鶴は、あっという間にすぅっと眠ってしまった。
千鶴が眠ったのを確認してから、簡単に片付けをして寝室に戻る。俺も後は眠るだけだ。
そっと近づいて千鶴の頬を撫でる。良く寝ているようで目を覚ます気配はない。ぬるくなってしまった冷却シートを新しいものに取り替えて、そのまま千鶴の枕元に座り込む。帰ってきた時の苦しそうな表情からすれば、かなり落ち着いた様子で、ほっとする。この様子なら明日には大分良くなっているだろう。
考えてみれば、同居を始めた年末からずっとばたばたしっぱなしだった。疲れた身体では最近の寒暖の差でついていけず、風邪を引いてしまったのだろう。ここまで熱を出す前に気付いてやれなかったことが正直ショックだった。自分より他人を優先するような千鶴だからこそ、俺が気にしてやらなくちゃいけないのに。……結婚して浮かれてたって所か。
千鶴が眠る前に、俺に風邪をうつしたくないと気にするのでリビングに来客用の布団を敷いて寝る約束をしたのだけれど、千鶴から離れがたくて動けない。だが、このまま俺が傍にいれば、朝起きた時千鶴が物凄く怒るのは分かりきっている。千鶴の髪を撫でていた腕を下ろし冷たい空気が入らないように布団を肩まで上げて整える。しょうがないと、しぶしぶリビングに移ろうと立ち上がりかけたときだ。引き止めるように、千鶴の手が俺の夜着の裾を掴む。
「ち、千鶴?」
中途半端な体制で固まって、小さく名を呼ぶが全く反応がない。眠っている、よな。
「おーい、離してくれよ。約束させたのは千鶴だぞ。」
小さな声で囁くように言ってみるが、無反応。無意識で掴んだらしい。その手を取って布を離させると今度は俺の手をきゅっと握る。
……そうだよな、寂しいよな。誰だって具合の悪い時は寂しいはずだ。千鶴だって本当は傍に居て欲しいって思ってるって事だ。やっぱりまだまだ千鶴を理解できてないな。だから、もっとわかりたくて傍にいるのだろうけれど。

「しょうがねぇなぁ。」
考えてみれば、リビングにいたのでは千鶴の容態の変化にも気付けない。熱がまた上がってくれば、きっと寒くて一人震えるのだろう。そんなの放っておけるはずがないよな。なにより、千鶴が寂しいって言ってるんだから。
いつもどおり千鶴の隣に滑り込んで、その普段より熱い身体をそっと抱き寄せる。寒さに震えないように。寂しくなったりしないように。そうすれば、千鶴も俺の胸元にするりと寄り添ってほっとしたため息を吐いた。
ほらな、やっぱり。寂しかったんじゃねぇか。

明日の朝、起きたらお前は怒るんだろうけれど。お前に寂しい思いをさせるくらいなら、いくらでも怒られてやるさ。



end.








【淡月】の藍羅様から、お見舞に頂きました。
左之さんに看病されているような気持ちに……というのは図々し過ぎますか(笑)。
藍羅様、ありがとうございました。




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